「今だから書ける、この本のウラ話」 第16回 『月光町ブルース』(リトル・ガリヴァー) 作家・武田久生さん


~著者にしか書けない嬉しさと辛さ~

今だから書ける、この本のウラ話 第16回

月光町ブルース』(リトル・ガリヴァー刊

作家・武田久生さん

 

『月光町ブルース』には、表題作「月光町ブルース」と「ホラ吹き松吉」の2作品が収められています。書下ろし作である「ホラ吹き松吉」の草稿は一週間程で出来上がったものの、その後、出版されるまでには半年以上もの時間が掛かっています。

元々、「ホラ吹き松吉」は反社会的な要素をその内容に含んだアナーキーな作品でしたが、少々、書きすぎてしまったきらいがあり、両親からは「このような悪書を世に出すつもりなら、二度と我が家の敷居は跨がせない」とまで当初は言われております。生家から追い出されたくはありませんでしたので(笑)それから、必死に書き直し作業を進めました。通常、推敲作業にここまでの時間を掛けることはないと編集者からは言われました。しかし、私にはこのような事情もありましたので、作品を生まれ変わらせる必要がありました。初稿完成から最終稿ができあがるまで、あれほどの時間が掛かってしまった一因はそこにあります。この時期していた推敲作業が、一番、大変だったと、今は言えます。

出来上がった作品が本の形になって、自分の元に送られてきたときの喜びと興奮は筆舌に尽くし難いものがあります。辛い思いもたくさんありましたが、作品を書き上げ、世に送り出すことができて、本当に良かったと思っています。

掲載目録
http://www.tokyonew.com/tbs/pdf/mokuroku20141011.pdf

月光町ブルース』(リトル・ガリヴァー

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